【物語・第5話】ミドルシニアが挑む!IT・デジタルで実現する業務改革:全社員のITスキル底上げを目指して ― 社内の知識共有とコラボレーションの推進

全社員のITスキル底上げを目指して ― 社内の知識共有とコラボレーションの推進 DX推進

今回は、「ミドルシニアが挑む!デジタル化で実現する業務改革」の第5話をお届けします。これまでの話では、プロジェクトチームが中心となって、さまざまな活動に臨む様子を描きました。その経験・成果を活かし、社員一丸となってITスキルを底上げし、シニア社員も若手社員も協力してデジタル化に取り組む体制づくりを目指します。

デジタルに慣れた若手世代だけではなく、シニア社員も含めた全社員がIT・デジタルを積極的に学び合い、世代を超えたコラボレーションを目指すことで、組織全体の成長に向けた基盤が築かれていく様子を描きます。

人材育成『いまなび』

第一章:自社内でのITスキル向上を目指す新たな挑戦

リモートワーク(第1話)、CRMシステム構築(第2話)やオンラインショップ開設(第3話第4話)への挑戦を通じて、顧客視点の重要性を学んだバックオフィス部門の社員たちは、次の課題に直面していた。これまでは、外部コンサルタントである渡辺のリードのもと、デジタルスキルを習得しながら進めてきたが、継続的に改革・改善を続けていくためには、今後は自社内でのITスキルの底上げを実現するために、社内教育体制の構築が必要だと考えている。特に、ITの学びに消極的なシニア社員も含め、全社員が若手と共にITを活用して、スムーズにコミュニケーションやコラボレーションできる環境を目指すべきだと考えたのだ。

「これからは、シニア社員も若手もITスキルを共有し合って、組織全体で成長していく必要があります。」

鈴木は、全社員のデジタルスキル向上を通じて、業務の効率化とコミュニケーションの強化が目指せると感じている。渡辺もこの挑戦に賛同し、経験豊富なシニア社員と若手が一緒に学ぶことで、ITツールを活用した新しい形のチームワークが生まれると期待していた。

第二章:教え合いと世代間のコラボレーション

プロジェクトチームでは、自分たちが習得したスキルを社内で共有し、シニア社員も含む全社員のITスキル向上を実現するための社内研修プランを構築することにした。ITスキルに不慣れな社員でも理解しやすい内容にする一方で、単なる知識の詰め込みとならないよう、若手社員とシニア社員が互いに得意分野を生かして教え合える環境を目指した。

「例えば、オンラインでの共同作業方法や、効果的なコミュニケーションのコツなど、世代を超えたチーム力を育てることを意識した研修にしたいですね。」

佐藤や田中は、これまで自分たちが習得したITスキルを基盤に、全社員がスムーズにコラボレーションできるようなプログラムを盛り込むことにした。研修内容には、オンライン会議の基本操作や情報共有の方法、また若手社員が得意とする最新ツールの紹介も含め、全社員が一体となって学び合える機会を設けることにした。

これまで実施してきた社内研修実施時の反省も検討要素に加え、最終的な実施方針として、以下の3項目を意識して進めることとなった。

1. ペアリング学習

シニア社員と若手社員がペアを組み、お互いの得意分野を活かして学び合えるようにする。例えば、シニア社員が業務の知識や経験を伝え、若手社員がITツールの操作やデジタルコミュニケーション方法を教えることで、双方のスキルアップを図る。これにより、世代間の知識ギャップを埋めつつ、自然な形でのコラボレーションを目指す。

2. 社内ワークショップの実施

ワークショップ形式を交え、新しいデジタルツールや業務の具体的な効率化手法を、受講者が参加意識を持てるような形で共有する場を設ける。世代を超えた参加者が意見交換できる場を用意することで、新たな発見やアイデアが生まれやすくなり、会社全体のスキルアップと意識の統一に繋げることを目指す。

3. プロジェクトベースのタスクシェアリング

各現場で、ITスキルの習得を目的とした短期プロジェクトを設定し、シニア社員と若手社員がチームを組んで取り組む。たとえば、実際の業務を通して、顧客管理ツールの導入をシニア社員が中心に学び、若手が技術サポートを行うような形式である。プロジェクト形式での学びにより、具体的な成果が見えることで、学習の意欲が増し、次のプロジェクトへのモチベーションにも繋がるはずである。

現場でのトレーニングは、これまでは「名ばかりOJT」となってしまい、体系的な育成手順や評価方法などを用意してこなかった。その点を改善できるよう、何をすべきかを一覧化した「チェックリスト」、何を実施したかの「評価レポート」などの様式も整え、いつでも、誰に対しても再現できる基盤の整備を目指す。

第三章:全社員向けIT研修の実施と効果

研修準備が整い、いよいよ全社員を対象にしたIT研修が始まった。シニア社員だけでなく、若手社員も参加し、世代を超えた学びの場を用意した。ITスキルのレベルに応じて、必要な基礎から応用までカバーする内容が用意され、実践的なIT活用法を題材として取り上げている。

「年齢や経験に関係なく、チーム全員がスムーズに情報を共有できるようになれば、会社全体がもっと効率的に動くはずです。」

鈴木がそう話すと、研修を受けたシニア社員からも、「実際にツールを使ってみると、思っていたより簡単で便利だ」「仕事現場で活用するのはもちろんだが、プライベートでのIT活用機会を増やせそうだ」など好意的な声が上がり、研修は社内で好評を博した。また、若手社員も、研修中に積極的にシニア社員のサポート役を務め、スキルを共有し、お互いの強みを感じあうことで、シニア社員と一緒に成長している実感も感じられた。

こうして全社員がITスキルを活かして連携を深め、コミュニケーションが円滑になり、業務現場でのIT活用が加速的に進むようになった。

第四章:社長吉田の新たな展望

全社員が積極的にITスキルを活用し、世代間のコラボレーションがスムーズに進んでいる様子を見て、社長の吉田は改めて組織全体の成長を実感していた。会社全体でのデジタル化推進が進む中、吉田はさらなる発展を見据え、全社員が継続的に学び、ITを活用して次世代へとつなげる企業文化の定着を決意した。

「シニア社員も若手も、互いに支え合って学び、働ける環境ができつつあります。これからも全員でITを活用し、連携して会社を成長させていきましょう。」

吉田は、デジタル化が業務改善だけでなく、組織文化の一部として根付いていることに感慨深く、こうして自社でのIT研修体制が整い、全社員の成長を支える基盤が完成したことを誇らしく感じていた。

ついこの前まで、「今の業務のやり方で何が悪いんだ?」と反発を抱く社員の存在が、紙からデジタルへのシフトの障害となっていた。その時の様子を思い出しながら、「うちの会社の新しいカルチャーが出来上がりつつあるんだな」と、長年会社を牽引してきた社長の吉田にとっては感慨もひとしおであった。

エピローグ

社内でのIT研修体制が確立され、シニア社員も若手社員も共に学び合いながら成長する社内環境が整った。今では、世代を超えたチームワークが生まれ、社員たちで自発的に開催する「IT勉強会」のような機会も増えた。人事評価制度にも、「IT・デジタルスキル」に関する評価項目を加え、制度面でのサポートも進んでいる。


いよいよ次回が最終回、第6話では、オンラインショップの運営が本格化し、顧客対応やマーケティング施策に取り組む社員たちの様子をお届けします。シニア社員と若手社員が学び合いながら、ITスキルを駆使して顧客満足度を高めるための工夫を重ね、事業の発展や会社の成長に貢献する姿を描きます。デジタル化の挑戦を通じて一層結束を深めたチームが創り上げた「未来の会社の姿」。どうぞお楽しみに。

人材育成『いまなび』