デジタル化が進む中、仕事を効率的に進めるためのスキルとして「プログラミング」に注目が集まっています。しかし、「プログラミングは若い人が得意なもの」「今までトライしたことのない自分には難しい」と感じているミドルシニアの方も多いのではないでしょうか?
昔と違って今は、学習手段や支援サービス・ツールがたくさんあり、プログラミングは思っているほど難しいものではありません。特に業務の中で役立つアイデアは、簡単なプログラムでも十分に実現可能ですし、一から全部作らなくても、ネット上にさまざまなアイデアやリソースが公開されています。本記事では、プログラミング初心者のミドルシニアでも取り組みやすいアイデアとその応用方法をご紹介してみます。
1. プログラミングの基礎知識
(1)プログラミングって?
プログラミングとは、コンピューターに対して「何をどうするか」を指示するための手段です。具体的には、ソースコードと呼ばれる指示文を記述し、それをコンピューターが実行することで業務を効率化できます。たとえば、「このデータを並べ替える」「定型メールを自動で送る」といったことを簡単に指示できます。
(2)例えば、こんなプログラミング言語
業務で利用するPCはWindows OSが多いのではないかと思います。そうであれば、初心者におすすめのプログラミング言語は以下の通りです。ただし、会社のネットワークやPCを利用する場合は、セキュリティの関係で、実行が制限されている場合がありますから、どんなプログラミング言語を利用することができるか、社内のIT管理担当者に確認しておくと良いでしょう。
- Python:シンプルで分かりやすく、多くの業務に応用可能
- Excel VBA:Excelを使ったデータ処理や自動化に最適
(3)必要な準備は?
プログラミングを始めるには、高価なツールや特別な知識は必要ありません。多くのプログラミング言語は無料で始められます。インターネット接続環境さえあれば、学習リソースも山ほどあります。
- Pythonの無料インストール:公式サイトからダウンロード可能
- Excel VBA:Microsoft Excelがあればそのまま使えます
2. 業務に役立つプログラミングアイデア集
(1)簡単なタスク自動化
毎日繰り返す単純作業をプログラムで自動化することで、業務効率が大幅に向上します。
- メール作成の自動化:Pythonでテンプレートを使ったメールを自動生成
- ファイル整理:フォルダ内のファイルを自動的に分類するスクリプト
※「スクリプト=プログラム」と考えていただいてOKです。
(2)データ整理と分析
大量のデータを扱う場合、手動で整理するのは大変です。プログラムを活用すれば簡単に解決できます。
- データのクリーニング:Pythonで不要なデータを削除したり並べ替えたり
- 売上分析:Excel VBAで月次売上の集計表を自動作成
(3)メール送信の効率化
顧客やチームメンバーに送る定型メールを自動化することで時間を節約できます。
- Pythonでのメール送信:ライブラリを使って簡単にメールを送信
- Excelと組み合わせ:顧客リストを読み込みながらメール送信
(4)簡単なウェブスクレイピング
ウェブ上の情報を自動収集することで、調査やリサーチの時間を短縮できます。ただし、スクレイピングには、機械的なアクセスによる負荷が増大するなどの問題を起こすことがあるため、ウェブサイトによっては利用規約などで、禁止・制限を設けている場合があります。事前にしっかり調べてから利用するようにしましょう。
- 競合の価格調査:Pythonでウェブから価格情報を取得
- 市場動向の収集:特定のニュースサイトから情報を集めてExcelに保存
3. プログラミングを仕事に活かすステップ
(1)まずは小さな成功体験から
最初は簡単なプログラムを作ってみましょう。例えば、下記のような処理であれば数行程度のソースコードで実現できてしまいます。
- 毎朝の業務報告書を自動生成するスクリプト
- ファイル名を統一するプログラム
(2)継続的な学び方が大切
プログラミングは続けることでスキルが向上します。以下の方法で学びを続けましょう。
- 無料リソースを活用:YouTubeやオンラインコースで初心者向けの教材を探す
- 1日10分から始める:短時間でも毎日続けることで習慣化
(3)困ったときの解決法
プログラムが動かない場合、ネット検索やコミュニティで解決策を見つけましょう。
- Google検索:エラー内容をそのまま検索
- フォーラムを活用:初心者歓迎のプログラミングコミュニティに参加
4. ネット上で公開されている成功事例
ネットで公開されている事例をいくつか探してみました。引用元と同じレベルのことが最初からできる訳ではありませんが、「そんなことができるのか!」という気付きにはなりましたら。
(1)55歳からPythonを学び、社内のデータ分析システムを構築
詳細はこちら:https://www.recruit.co.jp/sustainability/iction/ser/degitalskills/005.html
製薬会社の知的財産部に所属するHさんは、55歳からPythonの学習を開始。データ分析業務にPythonを活用し、業務効率化を実現しました。これにより、特許情報の収集やデータ加工の自動化が進み、業務の精度とスピードが向上しました。
(2)PythonとVBAを連携させたExcel業務の自動化
詳細はこちら:https://www.yuus-program.com/2024/02/05/python-vba/
ある企業では、PythonとVBAを組み合わせることで、Excelでのデータ処理や自動化を実現。具体的には、Pythonでデータを処理し、その結果をVBAを通じてExcelに反映させることで、手作業の削減と業務効率の向上を達成しました。
(3)シニア社員がPythonとAIを活用し、暗黙知を形式知化
詳細はこちら:https://www.hj.sanno.ac.jp/cp/feature/202401/15-01.html
シニア社員がリスキリングの一環としてPythonとAIを学習。これにより、長年の経験や暗黙知をデジタル化し、後進への効果的な引き継ぎを実現しました。この取り組みは、業務効率化と組織全体の知識共有に大きく貢献しています。
これらの事例から、ミドルシニアの方々がプログラミングやデジタル技術を活用することで、業務効率化や組織への貢献が可能であることがわかります。自身の経験や知識を活かしながら、新たなスキルを習得することで、さらなる活躍の場が広がるでしょう。
5. まとめ
プログラミングは、単なる技術スキルではなく、現代の業務効率化や課題解決において重要なツールです。特にミドルシニアの方々にとっては、これまでの経験や知識を活かしながら新しい可能性を広げる鍵となるでしょう。
大事なのは、突然、実務的な成果を求めて業務レベルの難しいことから始めず、まずは小さな一歩から始めてみましょう。「できる」という実感を持つことで、プログラミングの楽しさや効果を実感できるはずです。
たとえば、日々の単純作業を自動化することで時間を節約し、より創造的な業務に集中する余裕を生むことができます。また、データ分析や報告書作成など、これまで手作業で行っていた業務が短時間で精度高く完了することで、個人としての評価が高まり、職場全体の生産性向上にもつながります。
さらに、プログラミングを学ぶことで、新しいコミュニティとのつながりを築くことも可能です。同じ興味や意欲を持つ仲間と共に学ぶことで、モチベーションを維持しながらスキルを高めることができるでしょう。また、これらの学びを職場に持ち帰り、他の同僚に共有することで、職場全体のデジタルリテラシーを向上させる役割を担うことも期待されます。
プログラミングスキルを通じて、自分のキャリアに新しい選択肢を生み出すことにもつながります。定年を迎えた後でも、自身のスキルを活かして活躍し続けられる道が開けるかもしれません。また、家庭や地域社会の中でも、そのスキルを役立てることで、充実したセカンドライフを送ることができます。
繰り返しになりますが、最初の一歩は、シンプルなプログラムを試してみること。簡単なコードを書いて実行し、その結果が目に見える形で現れる感動を味わい、次への意欲につなげること。学びを進める中で、「できること」が広がり、それがやがて大きな自信につながります。
プログラミングは、年齢や経験に関係なく、挑戦する価値のある分野です。ぜひ今日から、小さなステップを踏み出してみてはいかがでしょうか。始めてみると、楽しくて、ハマるかもしれませんよ。